
現在、日本には非常に多くの外国人観光客や外国人労働者の方がいらっしゃいます。政府が外国人の受け入れを全力で推し進めていることもあり、その数は年々増え続け、街中や職場などで外国人の方と接する機会も格段に多くなりました。その変化を肌で感じている人も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな日本に住む外国人の方々と接する際の注意点や、どんなふうに話せば、より日本語でのコミュニケーションが取りやすくなるかをご紹介します。
<もくじ>
・困っている外国人を見かけたら、英語で声をかけるべき?
・外国人とやさしい日本語で話そう
・外国人が苦手な曖昧表現
・困っている外国人を見かけたら、英語で声をかけるべき?
思いがけない場所で、外国人らしい人に急に出会ったら、あなたはどうしますか?困っているような様子だったら、どんなふうに声を掛けますか?
英語は苦手だし、ついつい避けて通ってしまう…という人も居るでしょう。逆に、「英語を話すチャンス!」と思い、「May I help you?」と話しかけに行く人も居るかもしれませんね。
でも、ちょっと待ってください。肌の色や顔立ちが日本人的な特徴を持っていないからと言って、その人は本当に「外国人」でしょうか?もしかしたら、ご両親のどちらかが日本人のミックスルーツ(近年では「ハーフ」や「混血」、「ダブル」と言った呼び方は避けるべきという考えが多いですね)や、ご両親は海外出身でも自身は日本で生まれ育った日本語ネイティブかもしれません。
そして、実際に海外から来日している人だったとしても、その人が英語を得意としているかどうかは分かりません。元々英語圏以外の出身で、日本でしばらく暮らしている方であれば、英語よりも日本語を得意としている人も多いでしょう。

西洋的な特徴を持った顔立ちの人を見かけたら、つい反射で「英語を話さなくては」と考えてしまいがちですが、親切のつもりのその英語の呼びかけが、もしかしたら相手にとっては逆に失礼になったり、心を傷つけてしまうこともあるかもしれません。
私たち日本人も、海外旅行に行った際に「アジア人っぽい顔だから、中国語で間違いないだろう」と、片言の中国語でぐいぐい話しかけられたら戸惑ってしまいますよね。
相手がどんな言葉を話す人なのか一切情報が無い状態の時には、まずは「こんにちは、大丈夫ですか?」と日本語で呼びかけてみましょう。そして相手にとって英語の方がコミュニケーションを取りやすそうだなと感じたら、そのタイミングで初めて英語に切り替えた方が失礼が無いかもしれませんね。
・外国人とやさしい日本語で話そう
職場や学校でも、日本語が母語ではない外国人の人とコミュニケーションを取る時には、細部が伝わらなくて難しく感じることがあるでしょう。日本語を学習中の外国人の方と話をするときには、相手がどの程度の日本語だったら聞き取りやすいのか、少しずつ様子を見ながら、やさしい日本語で話していくのが良いですね。
気を付けると良いポイントとしては、以下の点が挙げられます。
①早口にならないようにする
露骨にゆっくり話す必要はありませんが、句読点を少し意識してあげるだけで、聞きやすさが格段に上がります。
②一文が長くなり過ぎないようにする
一文がダラダラ長くなってしまうと混乱しやすいので、適度な長さの文章をいくつか繋げて全体の意味を伝えるよう意識すると良いですね。
③主語や述語の過度な省略は避ける
日本語は主語や述語を省略しやすい言語です。誰が、何をするのか?誰に?いつ?どこに?重要な情報が伝わりやすいように意識してみましょう。
④難しそうな熟語は言い換えをする
二字熟語は少し難しいと感じる日本語学習者も多いです。一つの単語が通じてなさそうかな?と思ったら同じ言葉を繰り返すだけでなく、別の言葉に言い換えをしてみましょう。

例えばこの記事の冒頭の文章を、やさしい日本語に書き換えてみましょう。
<Before>
現在、日本には非常に多くの外国人観光客や外国人労働者の方がいらっしゃいます。政府が外国人の受け入れを全力で推し進めていることもあり、その数は年々増え続け、街中や職場などで外国人の方と接する機会も格段に多くなりました。
<After>
いま、とても沢山の人が外国から日本に来て、旅行をしたり、仕事をしたりしています。日本に居る外国人の数はどんどん多くなっています。昔に比べて、街や会社で外国人と会うことが増えました。国が外国人がたくさん日本に来てくれるように、サポートしているからです。
BeforeとAfterを比べてみていかがですか?話す場合も、「現在⇒いま」「非常に⇒とても」など、簡単な単語への言いかえや、長い文章を二つに分けて話をするだけで、ずいぶんと外国人にとって聞き取りやすくなるかと思います。

皆さん自身が「外国人」として海外に滞在しているときに、どんなふうに現地の人が話しかけてくれたら聞き取りやすいか、相手と立場を入れ替えて考えてみると、イメージしやすいでしょう。慣れない外国に渡航して不安いっぱいの時に、やさしい英語で親切に対応してもらえたら凄く安心するし、その国の人たちが好きになりますよね。今日本に居る皆さんも、世界の人たちに日本を好きになってもらえるよう、やさしい日本人の代表選手になって欲しいなと思います!
ただし、やり過ぎには注意しましょう!既に長く日本に滞在し、日本語ペラペラの状態の外国人に対して、過度に簡単な言葉で幼児に対するように接するのは、相手に失礼ですよね。一番大切なのは「相手と気持ちよくコミュニケーションを取りたい」という気持ちです。それさえあれば、相手の様子を見ながら自然と話し方を調整することができるでしょう。
・外国人が苦手な曖昧表現
最後に、気を付けていてもついつい使ってしまう、日本語的な曖昧表現の中で、特に外国人の理解しにくい言い方について紹介しますね。
曖昧表現の代表格と言えば、「大丈夫」です。大丈夫という言葉は、「問題無い」という意味合いを持って、様々なシーンで使われます。「体は大丈夫ですか?」と調子を尋ねたり、「入っても大丈夫ですか?」と許可を得たり、「その時間で大丈夫ですよ」承諾したり。
混乱を招く原因は、「大丈夫」は断り文句でも頻繁に使用されることです。
例えば、「AさんやBさんと映画に行くことにしたんだけど、今度の日曜日、Cさんも一緒にどう?」と言う質問に対して、Cさんが「日曜日かぁ、私は大丈夫」と返事をしたとします。
Cさんは映画に行くのでしょうか、行かないのでしょうか?もしかしたら、日本人同士なら話し方や表情からどちらなのか察して理解することができるかもしれませんが、外国人にとって、それを見極めるのは至難の業です。
出来る限り「私も行くよ」「今回は止めておくよ」など、返答を明確にしてあげると親切ですね。
同じような表現として、「いいです」や「結構です」も、肯定にも否定にもなり誤解を招きやすいので注意しましょう。

また、日本語的な表現で、「~なんですが…」と状況や自分の感情のみを述べて、相手にそれに対しての対策/改善を期待する言い方があります。
例えば、窓を開けている人の隣の人が「ちょっと寒いんですが…」と言ったら、それはつまり「窓を閉めてくれませんか?」という意味ですね。日本人は直接的に依頼を指示を出すのが苦手な傾向があるので、状況のみ伝えて後は相手に察してもらおうとするのです。
しかし、これを言われた外国人の多くは意味を察することが出来ずに混乱します。単純明快に、自分が何をしてほしいのかを伝えてあげることがむしろ丁寧で親切な対応と言えるでしょう。

いかがでしたか?
丁寧で柔軟な、やさしい日本語で自分の意思を伝えられる人は、それが異なる言語になったとしても、意思疎通がスムーズに出来ます。
言語に囚われないコミュニケーション自体のトレーニングとして、また今目の前にいる外国人の人はこれから海外渡航をする自分自身だと考えて、やさしい日本語での外国人との交流に挑戦してみましょう!
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