
この記事では、ワーキングホリデービザで来日した外国人が日本で就労する際の社会保険(健康保険・厚生年金)加入義務について、雇用主の視点も交えながら解説します。読者の皆さまが「自分は該当するのか」「会社は何をすればいいのか」という疑問に、正確な情報に基づき、具体的な行動につなげられるよう努めます。
ワーホリで日本に来た外国人の社会保険加入は必須?
労働基準法・健康保険法・厚生年金保険法などの労働・社会保険関係法令は国籍を問わず適用されるため(厚生労働省)、ワーキングホリデー(在留資格=特定活動)で来日した外国人であっても、日本人と同様に社会保険の加入義務が発生する場合があります。重要なのは、就労時間・賃金などの条件を満たすかどうかです。単なる「外国籍だから免除」という考え方は誤りであり、法的に定められた要件を満たせば、強制的に加入させる必要があります。
社会保険加入の要件:フルタイムと短時間労働者
フルタイム従業員の場合: 所定労働時間が原則として週40時間以上のフルタイム従業員は、企業規模を問わず健康保険・厚生年金の加入対象となります。これは、雇用形態に関わらず、就労時間と賃金が一定水準を超えれば、社会保険の保護を受ける権利があるという考えに基づいています。
短時間労働者の場合: 令和6年(2024年)10月以降、以下のすべての要件を満たす短時間労働者も社会保険の加入対象となりました。この適用拡大は、多様な働き方に対応し、より多くの労働者を社会保障制度の網羅下に置くことを目的としています。
- 週の所定労働時間が20時間以上:これは、単発のアルバイトではなく、継続的な就労を前提とするものです。
- 所定内賃金が月額8.8万円以上:この金額は、生活に必要な最低限の収入を保障するための基準とされています。
- 雇用期間が2ヶ月を超える見込みがあること:短期的な雇用ではなく、ある程度の安定した雇用関係であることが条件です。試用期間のみの場合は、加入対象外となる可能性があります。
- 学生でないこと:在学中のアルバイトは、社会保険の適用除外となります。ただし、休学している場合は、上記の要件を満たせば加入対象となります。
- 勤務する企業の規模が従業員数51人以上の企業であること:この要件は段階的に拡大予定であり、2027年10月からは36人以上の企業にも適用されます。
社会保険料率:具体的にはいくら?
厚生年金保険: 厚生年金保険料率は18.3%で固定されており(平成29年=2017年9月を最後に引上げ終了)、事業主と被保険者がそれぞれ半分ずつ負担します。つまり、各9.15%となります。標準報酬月額は1等級が8.8万円から、最高32等級が65万円まで設定されています。標準報酬月額の等級は、毎月の賃金に基づいて決定され、保険料の計算に用いられます。
健康保険: 協会けんぽ(全国健康保険協会)の健康保険料率は都道府県支部ごとに異なります。令和8年度(2026年度)の全国平均は9.90%(令和7年度の10.00%から引下げ、令和8年4月納付分から適用)。こちらも労使折半です。料率は、加入者の年齢構成や性別などによって変動します。
介護保険: 40歳〜64歳の加入者は、介護保険料が加算されます。令和8年度の介護保険料率は1.62%(労使折半)となります。介護保険は、高齢化社会に対応するための制度であり、将来の介護費用を確保するために徴収されます。
社会保険加入手続きの流れ:雇用主は何をすれば良いか?
短時間労働者が社会保険加入対象となった場合、雇用主は以下の手順で手続きを行う必要があります。
- 被保険者資格取得の手続き: 従業員の情報を基に、「被保険者資格取得届」を作成し、管轄の年金事務所または健康保険組合へ提出します。
- 標準報酬月額の決定: 従業員の毎月の賃金に基づいて、標準報酬月額を決定します。
- 保険料の徴収と納付: 従業員から保険料を天引きし、事業主負担分を含めて年金事務所または健康保険組合へ納付します。
- 資格喪失の手続き: 従業員が退職した場合、「被保険者資格喪失届」を作成し、管轄の年金事務所または健康保険組合へ提出します。
これらの手続きは煩雑であるため、社会保険労務士などの専門家に依頼することも検討しましょう。
ワーホリは雇用保険には入れない?
ワーキングホリデー制度で来日した外国人は、社会保険加入要件を満たしても、雇用保険の適用除外となります。これは、ワーキングホリデービザの目的が「就労」ではなく「休暇」であるためです(公益財団法人栃木県国際交流協会)。昼間学生も同様に、雇用保険の対象外となります。ただし、アルバイトなどで収入を得ている場合でも、雇用保険には加入できません。
労災保険は必ず加入できる
一方で、労災保険(労働者災害補償保険)は、国籍や在留資格を問わず日本で働く全ての労働者に適用されます。ワーキングホリデーで来日した外国人であっても例外ではありません。労災保険料は全額事業主負担です(厚生労働省)。万が一、業務中に怪我や病気をした場合、労災保険から治療費や休業補償が支給されます。
外国人雇用時の注意点:届出義務
ワーキングホリデーの外国人を雇用する際、入社・退職の際には必ず、勤務先を管轄するハローワークへ「外国人雇用状況の届出」を提出する必要があります(厚生労働省)。これは、雇用保険の被保険者であるかどうかに関わらず、すべての外国人労働者に適用される義務です。この届出は、外国人の就労状況を把握し、適切な労働条件を確保するために行われます。
よくある質問(FAQ)
Q. ワーホリで来日した外国人が短時間労働者の要件を満たした場合、会社はいつまでに社会保険に加入させれば良いですか? A. 令和6年(2024年)10月以降、週20時間以上勤務し、月額賃金が8.8万円以上のワーホリ参加者は、企業規模51人以上であれば健康保険・厚生年金の加入対象となります。加入手続きは、原則として入社日から起算して1ヶ月以内に行う必要があります。(日本年金機構・全国健康保険協会 2026-08-12確認)
Q. 社会保険料の会社負担額を計算するにはどうすれば良いですか? A. 厚生年金は標準報酬月額に18.3%を乗じて半分の9.15%が会社負担、健康保険は標準報酬月額に都道府県ごとの料率(全国平均9.90%)を乗じて半分の4.95%が会社負担となります。介護保険は40歳〜64歳の加入者に限り、標準報酬月額に1.62%を乗じて半分の0.81%が会社負担です。(協会けんぽ 2026-08-12確認)
Q. ワーホリ参加者が母国の社会保険と二重加入する可能性はありますか? A. 日本と外国との間で社会保障協定が締結されている場合、一定の条件を満たせば二重加入を免除されることがあります。ただし、個々の協定内容や条件は国によって異なるため、詳細は関係省庁にご確認ください。(未確認)
Q. 短時間労働者の社会保険加入要件は今後変更される可能性はありますか? A. 社会情勢の変化や制度の見直しにより、短時間労働者の社会保険加入要件が変更される可能性があります。最新の情報については、日本年金機構や厚生労働省のウェブサイトをご確認ください。
Q. ワーホリ参加者が就労ビザに変更した場合、社会保険の手続きはどのように変わりますか? A. 就労ビザに変更された場合は、雇用保険にも加入可能になります。その際は、改めて被保険者資格取得の手続きを行う必要があります。
Q. 外国人労働者を雇用する際に、言葉の問題でコミュニケーションが難しい場合、どのようなサポートがありますか? A. 厚生労働省や各都道府県の労働局では、外国人労働者のための多言語対応の相談窓口を設けています。また、翻訳サービスや通訳サービスの利用も検討しましょう。
読者の方へ:次の一歩
この記事を読んで、自社でワーキングホリデー参加者を雇用している場合、または今後雇用する可能性がある場合は、改めて社会保険加入要件を確認し、適切な手続きを行うようにしてください。不明な点があれば、社会保険労務士などの専門家にご相談いただくことをお勧めします。労働者に対する適切な社会保障は、企業の社会的責任であると同時に、優秀な人材を確保するための重要な要素となります。


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