
ワーキングホリデー(在留資格「特定活動」)で来日した外国人は、原則として雇用保険に加入できません。しかし、雇用主には、外国人労働者を雇用する際に必ず守るべき手続きが2つあります。それは、外国人雇用状況の届出と労災保険への加入です。本記事では、これらの手続きについて、雇用主と労働者の両方の立場から、具体的な内容と注意点を解説します。また、雇用保険の加入要件や労災保険の適用範囲、そして将来的な法改正についても詳しく掘り下げます。
1. 雇用主向け:外国人雇用状況の届出について
外国人雇用状況の届出は、外国人を雇用するすべての事業主が義務付けられています。在留資格が「外交」「公用」である場合や、特別永住者を除き、ワーキングホリデーで来日している外国人であっても、雇用した場合は必ず届出を行う必要があります。この届出は、雇用保険の加入手続きとは独立しており、雇用保険の被保険者となるかどうかにかかわらず、必ず行う必要があります。
| 届出の種類 | 提出先 | 提出期限 | 提出様式 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 雇用保険の被保険者となる場合 | ハローワーク | 雇入れの翌月10日まで | 雇用保険被保険者資格取得届(様式第2号) | 喪失時は様式第4号を提出。雇用保険被保険者資格取得届が届出を兼ねる |
| 雇用保険の被保険者とならない場合(ワーキングホリデー等) | ハローワーク | 雇入れの翌月末日まで | 外国人雇用状況届出書(様式第3号) | |
| 離職の場合 | ハローワーク | 離職日の翌日から10日以内 | 雇用保険被保険者資格喪失届(様式第4号) |
届出を怠った場合、労働施策総合推進法に基づき、30万円以下の罰金が科される可能性があります。(出典:厚生労働省「外国人雇用状況の届出について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/todokede/index.html) 届出様式は、ハローワークの窓口で入手するか、厚生労働省のウェブサイトからダウンロードできます。届出様式の記入漏れや不備も罰則の対象となるため、注意が必要です。特に、在留資格や雇用期間、労働時間などの項目は正確に記入しましょう。
1.1 届出時の注意点と準備
- 必要書類の準備: 届出様式に加えて、外国人のパスポートや在留カードのコピー、雇用契約書などを準備しておきましょう。
- ハローワークへの確認: 提出先のハローワークを確認し、事前に提出方法や必要書類について確認しておくことをおすすめします。
- オンラインでの届出: 一部のハローワークでは、オンラインでの届出も可能です。オンラインでの届出が可能かどうか、事前に確認しておきましょう。
- 複数事業所での雇用: 複数の事業所で外国人を雇用している場合は、それぞれの事業所から届出を行う必要があります。
2. 労働者向け:雇用保険料の確認と相談先
ワーキングホリデーで来日した場合、原則として雇用保険の被保険者にはなりません。そのため、給与明細から雇用保険料が引かれることはありません。しかし、雇用保険の加入要件は、原則として「1週間の所定労働時間が20時間以上、かつ31日以上の雇用見込みがある」ことです。ワーキングホリデーの滞在期間や労働条件によっては、この要件を満たす可能性もゼロではありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 週所定労働時間 | 20時間以上(2028年10月からは10時間以上) |
| 雇用見込み | 31日以上 |
| 適用除外 | ワーキングホリデー(特定活動)で来日し、就労目的ではない場合 |
万が一、雇用保険料が引かれている場合は、以下のいずれかの理由が考えられます。
- 雇用主が誤って雇用保険の被保険者として手続きを行っている。
- ご自身の雇用条件が雇用保険の加入要件を満たしている(週所定労働時間が20時間以上、雇用見込みが31日以上)。
いずれの場合も、まずは雇用主に確認し、誤りがあれば訂正を依頼してください。それでも解決しない場合は、最寄りのハローワークまたは労働基準監督署に相談することをおすすめします。相談の際には、雇用契約書や給与明細など、雇用に関する書類を持参するとスムーズです。
2.1 雇用保険加入要件の例外と将来的な改正
雇用保険への加入要件は、例外規定も存在します。例えば、学生がアルバイトをする場合、一定の条件を満たせば雇用保険の適用除外となる場合があります。また、改正雇用保険法により、2028年10月1日施行予定で週所定労働時間の要件が『20時間以上』から『10時間以上』へ拡大されます。この改正により、より多くの外国人が雇用保険の被保険者となる可能性があります。
3. よくある失敗:特定活動の誤解と届出の忘れ
外国人雇用状況の届出を怠るケースとして、雇用主が「ワーキングホリデーは特定活動なので、雇用保険の適用がないから何もしなくて良い」と誤解してしまうケースがあります。これは誤りです。雇用保険の適用有無に関わらず、外国人を雇用した場合は必ず届出を行う必要があります。また、雇用主が外国人労働者の在留資格を誤解し、必要な手続きを行わないケースも見られます。例えば、ワーキングホリデーの在留資格を「就労」と誤認し、雇用保険の加入手続きを行ってしまうケースなどがあります。
3.1 届出忘れを防ぐための対策
- チェックリストの作成: 外国人雇用時に必要な手続きをまとめたチェックリストを作成し、確実に実行するようにしましょう。
- 担当者の明確化: 外国人雇用に関する手続きを担当する者を明確にし、責任を持って対応するようにしましょう。
- 定期的な確認: 定期的に外国人労働者の雇用状況を確認し、必要な手続きが漏れていないか確認しましょう。
4. チェックリスト:外国人雇用時の確認事項
以下の項目を事前に確認し、適切な手続きを行いましょう。
- [ ] 外国人の在留資格を確認する。
- [ ] 雇用契約書を作成し、労働条件を明確にする。
- [ ] 外国人雇用状況の届出を行う(雇入れ時、離職時)。
- [ ] 労災保険に加入する。
- [ ] 給与明細で雇用保険料が引かれていないか確認する。
- [ ] 労働時間や休憩時間など、労働基準法を遵守する。
- [ ] 日本語能力に配慮したコミュニケーションを心がける。
- [ ] 緊急時の連絡先を共有する。
- [ ] 文化や習慣の違いを理解し、尊重する。
- [ ] 2028年10月からの雇用保険加入要件の変更を考慮する。
5. よくある質問(FAQ)
Q. ワーキングホリデーは雇用保険に入れますか?
A. ワーキングホリデー(在留資格「特定活動」)で来日した外国人は、原則として雇用保険に加入できません。来日目的が休暇であるため、雇用保険の適用除外となります。(出典:公益財団法人栃木県国際交流協会https://tia21.or.jp/3208.html)ただし、週所定労働時間が20時間以上、かつ雇用見込みが31日以上の場合、雇用保険の加入要件を満たす可能性もあります。
Q. 雇用保険料が給与から引かれていたらどうすれば良いですか?
A. ワーキングホリデーで雇用保険料が引かれている場合は、雇用主に確認し、誤りがあれば訂正を依頼してください。それでも解決しない場合は、最寄りのハローワークまたは労働基準監督署に相談しましょう。加入要件を満たしている可能性も考慮し、雇用契約の内容を確認してください。
Q. 外国人雇用状況の届出を忘れるとどうなりますか?
A. 外国人雇用状況の届出を怠ると、労働施策総合推進法に基づき、30万円以下の罰金が科される可能性があります。(出典:厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/gaikokujin/todokede/index.html)
Q. 労災保険は外国人労働者にも適用されますか?
A. 労災保険は、在留資格を問わず、すべての外国人労働者に一律に適用されます。雇用主は、1人でも外国人を雇用する場合は、労災保険に加入する必要があります。(出典:公益財団法人栃木県国際交流協会https://tia21.or.jp/3208.html)
Q. ワーキングホリデー在留者の健康保険・厚生年金はどうなりますか?
A. 健康保険・厚生年金保険は雇用保険とは加入基準が異なります。ワーキングホリデー在留者であっても、労働時間・賃金等の適用条件を満たせば日本人と同様に加入対象となり得ます。ただし、詳細な条件については、日本年金機構や健康保険組合にお問い合わせください。
Q. 雇用保険料率はどのように決まりますか?
A. 令和7年度(2025年4月1日〜2026年3月31日)の雇用保険料率は、事業の種類によって異なります。一般の事業は労働者負担5.5/1000、事業主負担9/1000、合計14.5/1000です。(出典:厚生労働省 山形労働局https://jsite.mhlw.go.jp/yamagata-roudoukyoku/koyouhoken-20250213.html)
6. まとめ
ワーキングホリデーで来日した外国人は雇用保険に加入できませんが、雇用主には外国人雇用状況の届出と労災保険への加入義務があります。これらの手続きを正しく行うことで、外国人労働者と雇用主双方を保護し、円滑な労働関係を築くことができます。また、雇用保険の加入要件や労災保険の適用範囲、そして将来的な法改正についても理解を深めることで、より適切な対応が可能になります。
料金・為替・最低賃金は改定されることがあるため、申請前に必ず厚生労働省の公式ウェブサイトで最新情報を確認してください。




