先日、Inforumのアニマルボランティア先AWLから、ボランティア達の通訳を担当する日本人パートスタッフが妊娠とともに退職したため、申込み済み3名の受け入れが出来なくなったと連絡が来た。冷っ。そんな事で生徒に迷惑をかけるわけには行かない、と、私が通訳をかって出た。
初日、長袖、長ズボン、スニーカー、帽子、日焼け止め、強めの虫除けを身につけ、お水とおやつ、お弁当を持ってAWLへ3名の生徒と朝8時に到着。
担当のアネッタよりオリエンテーションパッケージをロゴ入りのエコバッグと一緒にもらい、名札をつけ、今後の日程を聞き、みんなで写真も撮り、気分は勉強(仕事)からを離れてピクニック。施設の見学をしながら、各部署の担当者も紹介してもらう。
最初の仕事は犬舎から。サイズ、性格などにより1~3匹ずつが各20畳位の広さの犬舎で里親を待っている犬達。その数100匹以上。検診で健康を確認されてはいるが、隠し持っているかもしれない病気を隣へ移さないようにと、犬舎の移動には一舎一舎、ゴム手をはめ変え靴裏も消毒する。一舎ごと掃除、フンの除去、ベッドつくり、おもちゃ、毛布と水の交換などをして行く。昨日施設に来たばかり、犬舎デビューの6匹のブラックラブラドールの仔犬とも戯れ、ここまでの感想は、簡~単、イージー、イージー、ノープロブレム!
私たちの他にもボランティアは全体で120名以上、一日に活動するボランティアは20名ほど。フン尿だけの処理を担当しているおじさん、早くもらわれて行くように、とグルーミングだけをもう12年もしているお婆さん、感染覚悟で病気の犬と遊んであげるおばさん、洗濯機7台を2回も回す洗濯担当おばさん、高いガソリン代を負担し、犬たちを散歩のためにビーチに連れ出してくれるおじさん、頭が下がるボランティアの人たちに次々と会い、午前中が過ぎていく。
次々と「お客」さんたちも到着。犬舎や猫舎をみながら、新しい家族になる動物たちを真剣に見定めている。朝に戯れたラブラドールの仔犬は、お昼までに次々ともらわれて行き、犬のビーチ散歩が終わって戻った頃には、全匹もらわれていなくなっていた。昨日シェルターに到着、検診、虚勢手術、犬舎デビュー、「養犬縁組」まで24時間!シェルターのすばらしさを目の前で体験し、感動! 12時に終わるはずだったプログラムは、大きな満足度とともに3時に終了。
2日目は猫だ。同じ要領で猫舎の掃除から始まる。猫と戯れることも大切な仕事。余裕~!
と思っていると、アネッタの無線に連絡が入る。イプスイッチという町で、25匹もの捨て猫が確保されたとの報告だった。生後1~3週間。後で説明を受けたが、2週間未満の捨て猫は、生存確率が低いそうだ。あちこちで無線を聞いていたスタッフの顔色が変わり、シェルター全体にスタッフの緊張が太い電気となって走り、私たちの「ノープロブレム」雰囲気は一気にその電気でビビビと焼き消された。
ここからは、まさに24時間緊急病棟のドキュメンタリーそのものだった。頭の中で、ナレーターの司会まで聞こえてきた。
到着まで1時間しかない。到着時に25匹を入れるカゴ、手術室のケージ、薬品、虚勢準備、回復室のケージ、薬品、ミルク、餌、毛布、タオルなどが用意される。獣医たちが早めの食事を取るように支持され、私たちも手術室へ行き、猫をくるむタオルを、猫のサイズにあわせ何十枚も切る作業をした。(ちなみに、犬と違い、猫には感染菌や寄生虫、害虫などが多いらしい。なので、シェルターで猫に使われるタオルや毛布は再利用されることはなく、全て焼却処分される。)
あっという間に1時間が過ぎ、猫が到着。4匹は成猫、21匹は子猫、その内10匹は手のひらに乗る10センチ程度の生まれたて。ミャー、と鳴けずにニー、とか細く鳴くのが精一杯。親猫にお尻をなめてもらえない猫たちはフンをすることも出来ず、お腹が餌ではなくフンで腫れていて、全身にはノミがたかっていた。感極まった生徒の一人が泣き出す。
生かす為に即刻しなくてはいけない事は山ほどある。「この子達の運命は、あなたたちにかかっているのよ!やる事を教えるから、一回で覚えてね!」と厳しくアネッタに指導され、手術用のガウンと手袋に身を包み、彼女を含めた私たち5名の流れ作業が始まった。
シャンプー、ノミの除去、リンス、タオルドライ、ドライヤーで完全に乾燥させ、ミルク室に連れて行き、授乳、餌を上げた後、手術室に運ばれ、検診。1キロ超えている猫たちは去勢され、回復室へもどされる。1秒たりとも無駄にせず、腰を曲げ、汗だらけになって4時間作業を続けた。獣医たちの緊張は続く中、私達の仕事は終了し、ボランティアコーディネーターが用意してくれて氷のしゃきしゃきアイスを食べながら、腰をトントン。質疑応答などを終え、感動と疲労のボランティアトレーニングが終わった。
「1週間オーストラリアで英語と、1日で良いからボランティアがしたいんです~」といった生半可な気持ちでは出来ないこのボランティア、日本人スタッフが居なくなった今では、英語力もUpper-Intermediate以上が求められる。でも、この感動を、人生の1ページに刻むのは悪くない。長期でこちらに居る生徒には是非体験して欲しい。
あ、そうそう、あれから引き続きボランティアに行き続けていた生徒から連絡が来た。あの子猫たちは1匹も居なくなったと聞いた。全部の猫たちが助かったとは思えない。でも、ほとんどの猫達がもらわれていったと信じよう。新しい家族の下で、猫じゃらしにじゃれている猫たちを想像しよう。あの日、頭の中で響いた緊急病棟の司会の声は、元気にミャーミャーと餌をねだる猫と、「全くうちの猫ちゃん、うんちが人並みに大きいは!こんなにコロコロして、来週からダイエットをさせなくちゃ!」と猫以上にダイエットが必要な「お母さん」の声に変わっていた。