「フレキシタリアン」という言葉をご存じですか?
「フレキシタリアン」とは菜食主義「ベジタリアン」の一種ですが、気軽にスタートしやすいということで近年話題となり、日本でもそのスタイルを取り入れる人が多くなってきました。
今回は、そんなフレキシタリアンという考え方、取り組みについてご紹介します。
<もくじ>
●「フレキシタリアン」とは?
●「フレキシタリアン」になる人の目的とは?
・健康のため
・環境保護のため
・動物福祉のため
●すぐに始められる「フレキシタリアン」の食生活とは?
「フレキシタリアン」とは?
冒頭でも記載している通り、「フレキシタリアン」とは、菜食主義「ベジタリアン」のスタイルの一つです。「フレキシタリアン」という単語は、「Flexible=柔軟な」と「Vegetarian=ベジタリアン/菜食主義」を組み合わせた造語。1992年にアメリカの新聞記者Helga Morathが記事で使用したのが初出と言われています。その後アメリカでそのスタイルが注目されるようになり、2003年にはAmerican Dialect Societyが選出するその年の「最も便利な言葉 (Most Useful Word)」に選出されています。
厳格なベジタリアンとは区別し、「セミ・ベジタリアン」や「カジュアル・ベジタリアン」、「準菜食主義」、日本では「ゆるベジタリアン」などとも呼ばれます。
普段はベジタリアンとして出来るだけ動物性の食品を食べないようにするけれども、時と場合によっては、お肉や魚、卵なども美味しくいただくのがフレキシタリアン。ベジタリアンになりたい気持ちはあるけれど、急に完全な菜食主義に移行するのは難しい、と感じている人が、気軽に始めやすいのが特徴です。
フレキシタリアンの、菜食主義の食事と動物性食品を含めた食事を摂る割合は、特に定められていません。「フレキシタリアンとはこれくらいの程度菜食主義を取り入れた食事をする人」という定義は存在しないのです。
ですから、「月に数回外食するときだけお肉やお魚も食べて良いことにしよう」という人も、「週に一日だけ”ベジタリアンデー”を作って動物性食品を食べないようにしよう」という人も、同じようにフレキシタリアンを名乗っていいと言うことですね。
「フレキシタリアン」になる人の目的とは?
先にフレキシタリアンとはどんなものかを説明しましたが、フレキシタリアンの人たちはそもそも何のために、どんな目的でそのような食生活を始めようとするのでしょうか?その目的とは、下記の3つに代表されます。
【健康のため】
現代の先進国に多い肥満の問題は、植物性食品中心の食事を摂ることで改善が見込めるといいます。植物性食品は動物性食品に比べてカロリーが低く、食物繊維が満腹感を維持してくれるため、必要以上の間食を抑えてくれる効果も。
また、食物繊維や抗酸化物質を多く摂取することで、健康的に体重を減らして理想の体型に近づくとともに、血圧が上がるのを抑え、心臓病のリスクも低くなります。
さらに、肉やその加工品が発がん性物質であり、それを避ける菜食主義者はがんの発生率を下げるというデータもあります。
ただ、上手に献立を組まないと、食事を急に変えることで栄養バランスを崩してしまうリスクもあるため、まずはフレキシタリアンから始めてみるという人も多いようですね。
【環境保護のため】
フレキシタリアンとして動物性食品を避けることで、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出を抑えることができます。自動車の排気ガスや工場などのエネルギーが注目されがちですが、実は世界全体の温室効果ガスの約1/4は畜産業から出ていると出ていると考えられており、地球環境に大きな影響を与えています。植物性食品は動物性食品に比べ、温室効果ガスの排出を1/10以下に抑えることが出来るので、菜食主義は地球にもとても優しいのです。
また同時に、動物性食品を控えることで、世界の水不足問題の悪化を防ぐことが出来ます。牛を育てるならば、その前にまず牛に食べさせる家畜飼料を育てなければならず、その為には大量の水資源を消費します。少ない水資源を家畜飼料の為に大量消費しているしわ寄せは、主に発展途上国の水不足問題と言う形で既に現れています。
牛肉1㎏の生産に至るまでには、約13,000リットルの水が必要と言われていますが、それをトウモロコシ1㎏に置き換えれば、水の使用は約500リットルに抑えられます。貴重な水資源を守るためにも、菜食主義が大きく注目されているのです。
【動物福祉のため】
世界では、人々の食料となるため、日々衝撃的な数の家畜動物たちが殺されています。農林水産省によると、令和元年に日本国内で食肉のために屠殺されたニワトリの数は、8億258万8000羽。なんと、日本だけで一日200万羽以上が殺されている計算に…。
これがニワトリだけでなく他の家畜動物も含めたら…日本だけでなく世界にデータを広げたら…さらに1年ではなく10年の数字を見たら……膨大な数になることがわかります。
また、食肉の為だけでなく、鶏卵や牛乳などの動物性食品を得るため、劣悪な環境で飼育されている家畜動物の数もはかり知れません。このような環境を少しでも改善するために、まずはフレキシタリアンから菜食主義を始める人も多くいます。
健康、環境保護、動物福祉…どれも非常に大切な問題ばかりですよね。もしどれか一つでも皆さんが注目したい問題があれば、少しずつでも菜食主義を取り入れてみてはいかがでしょうか。
すぐに始められる「フレキシタリアン」の取り組みとは?
様々な問題解決につながる菜食主義。興味があるし始めてみたいけど、やっぱりお肉は美味しいし、急に食生活を変えるのは難しい…。
そんな人にピッタリなのが、誰でもゆる~く始められる「フレキシタリアン」スタイルです!冒頭で述べた通り、フレキシタリアンを名乗る為の明確な条件はありません。
今日からすぐに始められる、フレキシタリアンの取り組みをいくつか紹介しますね。
●まずは一品だけ植物性食品に変えてみる
食卓にお肉が全くないのは寂しい…と感じるのであれば、複数ある動物性食品のうち、一品だけ植物性食品に置き換えてみると言うのはいかがでしょうか?例えば、いつもハンバーガーとナゲットを注文するなら、ナゲットをポテトやサラダに変えてみる。鶏のから揚げと一緒に豚汁を作る代わりに、普通のお味噌汁にしてみる。それだけでも最初の一歩としては充分です。
●まずは週に一日から始めてみる
いきなり毎日の食事から動物性食品を抜こうと思うと、かなりハードルが高く感じられますが、それが週に一日だけならどうでしょうか? 元ビートルズのポール・マッカートニーが2009年に提唱した「ミート・フリー・マンデー(Meet Free Monday)」というキャンペーンは世界に広がり、様々な企業や組織にも取り入れられています。
●代替食品を使ってみる
お肉を避けたいけど、ハンバーグや餃子などのメニューが大好き!と言う人は、大豆肉などの代替食品を使ってみるのはどうでしょう。近年は、スーパーなどでも大豆肉を見ることが多くなり、より手に入りやすくなりましたね。品質もより向上し、お肉を食べるのと変わらない美味しさと満足感を感じることができます。
上記のような取り組みから始めて、少しずつ植物性食品の割合を増やしていけば、ストレスなく菜食主義を取り入れることができるのではないでしょうか。
最初に書いた通り、フレキシタリアンとは何かを定義するルールはありません。動物性食品を控えようと少しでも活動している人であれば、誰でもフレキシタリアンを名乗ることができます。そして、「私はフレキシタリアンです」と名乗ることで、自分の意識を高めることにつながったり、自分だけでなく周りの人達の認識を少しずつ変えていくきっかけにすることができるでしょう。
是非皆さんも、今日からフレキシタリアンになりませんか?
<おすすめ記事>
・ワーホリで接客するなら知っておきたい!世界の【食の制限・嗜好】(Dietary restrictions)
・ワーホリ中の接客業必須知識!ベジタリアンとヴィーガンの違いって?
・【ローカルフード】渡航先で楽しく取り組む地産地消!【SDGs】